しなやか広場

2014年5月

「がん哲」日記(その3)

ラジオを聞く

平成26年皐月  菊井 正彦

私の趣味の一つに「ラジオを聞く」ことがあり、日々生活のリズムになっている。夜、床に就くと、ラジオのスィッチをいれて寝付く。朝、目覚めることにした時は、ラジオを入れるか、録ったばかりの「ラジオ深夜便」を聞く。日中でも自宅にいるときは、食事のあとはなるべく、ラジオをつけてベッドに横になり一休みするのを、オストメイトの自分の日課にしている。

ラジオを聞く習慣といっても、いつ頃からなのかはっきり覚えていない。社会人になるまでは、実家にラジオあったような記憶がない。ただ、高校生の頃だったと思うが、大学生の実兄の友人Sさんが自宅に下宿していた時期があり、そのSさんがラジオを持っていて、そのラジオからクラシック音楽が絶えず流れていたような記憶がある。

社会人になり、トランジスタラジオで有名になったS社に入社し、営業に配属された。初めて自分用に自社製のポケッタブルラジオを購入し、また、当時まだ扱い商品もラジオとテープレコダーだけだったが、仕事上当然のように、録音、録画(その後ビデオテープレコダーも発売)にも親しくなっていった。

写真:ICレコーダーとラジオICレコーダーとラジオところで、シニア真最中の自分もいつのまにか、NHK「ラジオ深夜便」のファンになってきており、毎日聞くだけでなく、ICレコーダーに録音している。録音しようがしまいが、この放送が20年以上も続いており、月刊誌が10万部以上も発行されているのを知ると、いかに日本が高齢社会になっているかを証明している。

 私が特に気に入って聞く、いや聴いているのは4時台の「明日への言葉」。この放送で沢山の素晴らしいスピーカーの存在を知った。さすがNHK、よくぞ話し手を呼んでくれたと感謝したい時もある。録音した中で、これはと思うものは更にSDカードに保存し、後で改めて聞く時もある。友人に紹介し、ダビングして送ることもある。話し手への興味が更につのると、インターネットで画像(顔)をチェックし、著書等を調べ、すぐ、いつも通っている図書館に貸出予約をする、という流れになる。

がんの手術後の入院生活にはラジオが欠かせなかった。入院中の日記をめくると、時々、「明日への言葉」等を聞いて、印象に残った話し手の名前が記録されている。ただ、差額ベッドの個室を選んでも、放送の受信状況が必ずしも良くない時は困る。

ラジオを聞くのは殆どAM放送だが、NHKのほかにはTBSをよく聞く。毎日聞いているので番組のおおよそは覚えてしまうことになる。昨今、いろいろな番組が、視聴者からの参画で構成され、成立していることがわかる。アナウンサーはしきりに「・・・感想、意見等をお待ちします」と呼びかけ、視聴者も、ラジオネームを使用し、メールやファクスで気軽に投稿し、常連さんもいることがわかる。

本稿を書きながら、急に思いついたことがある。ラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題による狂詩曲の第18変奏」のメロディ(※)である。これは、かつて、NHKが毎週土曜の午後に放送した「希望音楽会」というAM番組のテーマ音楽で、知っている人は相当なシニアになると思うが、私の耳にもハッキリと蓄積されている。特別クラッシックファンでもない自分がこの名曲を好きになった原点は、もしかしたら、上記のSさんのラジオから定期的に流れていたからではないか、と今は思う。

(※ https://www.youtube.com/watch?v=h_BArG3ollw&feature=related で聞けます)


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