しなやか広場

2015年5月

「がん哲」日記(その8)

涙がでてくる

平成27年5月  菊井 正彦

 年明け身体に変調をきたし、77日間入院したので、それなりに素材はあったのですが、「がん哲」日記がなかなかまとまりませんでした。今回は主に、どうしても病のことになります。

1.それは、鼠径部の痛みで始まった
 あらましは次のとおりです。
① 年明け早々、鼠径部に激痛を感じ、たまりかねて1月2日に緊急入院
② 検査すると恥骨部に前立腺ガンが進行しているのがわかる
③ 人工肛門を対策し、直腸がんの手術をしたが、自分の場合は「もともと前立腺ガンがあり、
  それが直腸がんに転移していた」ことを知らされる
④ 入院中に2度腸閉塞で吐き
⑤ 途中から栄養点滴と流動食に切り替え
⑥ 特に③にはショック、精神的にもダメージをうけ、気がつけば真冬に入院。 
  想定外の77日間、3月19日に退院しました。

画像:点滴ポンプの主な構成品:輸液剤画像:点滴ポンプの主な構成品:ポンプ画像:点滴ポンプの主な構成品:キャリーバッグ画像:点滴ポンプの主な構成品:左から 輸液剤/ポンプ/キャリーバッグ

2.訪問看護の当事者に
 入院して腸閉塞など、今までにない変調に直面しましたので、涙をこぼしているところを何人かの看護師に気がつかれたんでしょうね、看護師長にも呼ばれて話をしたことから、自分には専任のXさんをつける配慮をしてくれました。たまたま、ストーマ外来で知った男性看護師だったんですが、相性もよく嬉しかったですね。

 当面、「点滴と流動食で生きる」ことを選択しました。必要なツールは「点滴用ポンプと輸液剤」。そして、それらをいれるための手提げ袋。それらは、基本的には終日24時間、身のそばにくっつけておかねばならない我が分身です。
 「介護度3」を認定してもらう一方、入院中にツールの操作方法などを学習して、退院。そして週2回訪問してもらう在宅医療、看護の当事者になりました。

3.なぜ涙がでてくる?(1)
 今までにない変調に直面し、死も予感すると同時に妻、家族、友、知人との別れが想い起されます。病気になってから、やたら人が恋しい、懐かしい気持ちが募っていますが、そこに今回は悲しみ、せつなさが追い打ちをかけている感じです。特に47年間連れ添った妻(普通の夫婦では当たり前の状況ですが)にはその想いが本音で出てきます。涙がでてくる理由について、気持ちのやりとりとりについては、平均して日本人以上に淡泊な妻からは、笑ってすまそうとしているところがありますので、このあたりは、かまわず担当のXさんに吐露したりしました。
 公民館のシリーズ講座 「あなたは、どこで終末を迎えますか?」などで、当然、在宅医療、このようなプログラムも学習してきたわけですが、いざ、当事者になってみると、まだまだ覚悟ができていないなあ、と気づかされています。

4.なぜ涙がでてくる?(2) 
 上記の“ハイカロリー点滴”は流動食で補うかどうかは別として、意外に腹もちがいいのです。TVのグルメ番組を見たり、レストランのチラシが目に入った時などは、一瞬美味そうだなあ!とうらやましい気持ちになりますが、それが過ぎると食欲は遠ざかっており、基にもとにもどってしまいます。   

 とはいうものの、基本的には解消してくれそうもないガンの痛み、薬漬けの毎日、普通の食事が味わえない寂しさ、「点滴用ポンプ」が分身になっている不自由さ、エトセトラで、自分がせつなくなります。春の晴天がうらめしく、時に生きてゆくことが辛く感じることがあります。これが、涙がでてくるもう一つの理由です。

 というわけで、「がん哲カフェ」の方も4回欠席してしまいましたが、このあたりを仲間の人に、ぜひ聞いてもらいたく、次回5月には参加したいと思っています。


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